作詞作曲一覧



   夜光列車


丘の樹に 月光が咲いている
摘んだ葉の香りに 誘われて

月から伸びる閃路 光る列車は空を渡る
相席の老猫は 物静かなブルーグレー

ノッポの車掌がやって来て「切符を拝見いたします」
胸が跳ね 握り締めていた手を開くと
丘の樹の葉は 金の切符になっていた
猫が見せた切符は 金の音色の鈴


天球を写す 街の灯り
アルゴルの信号が 明滅してる

見上げるばかりだった 煌びやかなビルやタワーの
天辺を通過して ポラリスの逆方面へ

夜を作る工業地帯 煙突から昇る星屑
煙る夢は 懐かしいのに思い出せず
光届かぬ 彼方へと流れていく
窓に映る顔が 幼くなっていく


――まもなく終点、『ツキノウミ』。『ツキノウラ』へは、お乗り換えです。
  まもなく終点、『ツキノウミ』。『ツキノウラ』へは、お乗り換えです――。

降りたところは 眩い平原


原の樹に 影がひとつなっている
摘んだ実は 黒い切符になる

小さな僕の手から 猫が切符を持ち去った
僕を置いて駆けていく 向こうの乗り換え列車へと

消えかけた僕を知っていた君が 消えたと僕は知らずに
エメラルドの眼差しと共に くれたもの
大事にするよ 移ろい翳る足元を
濡らす涙さえ 忘れてしまっても


丘の樹が そよ風に揺れている
白い昼 乾いた月に背を向けた